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2009年10月24日 (土)

平成21年度(2009年)の宅建試験の講評 その2 (09.10.28追記)

平成21年の宅建試験では、「条文番号」の知識を必要とする問題や「条文の正確な理解」を必要とする出題が目立ちました。

たとえば、各指導機関によって正答番号が分かれている問31肢ウでは、「宅地建物取引業法第41条第1項に規定する手付金等の保全措置が必要な売買」との事例設定がされていますが、「未完成物件」なのか「完成物件」なのかについて、「第41条第1項」という条文番号によって判断しなければなりませんでした。
「未完成物件」であれば「第41条第1項」となりますが、「完成物件」であれば「第41条の2」となり結論が変わってきます。

じつは、僕自身も試験中に結論を出すことはできず、試験終了後に条文を確認して正解番号を確定させました。
持ち帰った問題冊子には、「完成→ ×」・「未完成→ ○」という書き込みが残っています。

あくまでも想像の域を出ませんが、おそらく試験問題作成者は、普段当たり前のように使用している「用語」=「条文番号」で問題文を作成したのだろうと考えています。
他の試験委員も専門家ですから、問題とされなかったというのが本当のところかもしれません。
官公署に実務上の問い合わせをする際にも「○○条」が連発されますので。

また、問38肢イについてですが、「説明した建物の(=買主が知っていた)瑕疵について担保責任を負わないとする特約」が有効なのか無効なのかを判断するには、「宅地建物取引業法第40条」と「民法第570条」の文言も含めて正確に理解している必要があります。

「宅地建物取引業法第40条」では、「民法570条 に規定するものより買主に不利となる特約をしてはならない」と規定されていますが、「民法第570条」は「売買の目的物に隠れた瑕疵があったとき」の規定ですから、「買主が知っていた瑕疵」については適用されませんし、「民法567条」の買主が悪意の場合でも権利を行使できる「抵当権等がある場合における売主の担保責任」については本肢事例にはあてはまらないと考えることができます。

問31肢ウについては別論として、少なくとも問38肢イについては、使用したテキストや参考書の記載次第では、正答を導くことができなかった受験者も多いのではないかと考えています。
単に、「買主に不利な特約は無効」のような記載をしているだけのテキストもあるようです。

宅建試験対策講座を担当する講師レベルでも、あやふやなまま講義している場合が多いのではないかと考えています。
宅建試験に合格したときの学習では六法の条文を引きながらの学習は行っていないでしょうし、講師となった後も、テキストの内容だけを予習して講義を行う講師が多いからです。

宅建試験対策講座を担当する講師の場合、他の資格試験の受験者であることも多いですから、民法についてはそれなりに修得している場合もありますが、宅建業法の条文に丁寧にあたって学習をやり直している講師は少数派だと考えています。
今回他校の解説を参照しながら正解番号を二転三転させた講師や指導機関が多いことの原因となっているのかもしれません。

僕自身、宅建講師となった初年度(平成14年)は旧司法試験の受験が本業のアルバイト講師でしたので、そのレベルでした。
受講生からの質問に答えることができず「これではギャラはもらえない」と、六法の条文に丁寧にあたって講義できたのは、2年目以降です。

宅建業法の条文の解釈についても然りです。
「宅建業法の目的」について、偏った解釈をして解説していることが多いようです。
宅建業法の目的は、「購入者等の利益の保護」だけではなく、「宅地及び建物の流通の円滑化」を図ることも含まれます。
特に、「自ら売主8種制限」の規定については、「購入者等の利益の保護」についてだけ考えていては理解して学習することはできないです。
極論すると、消費者保護と業界団体からの要望(必ずしも消費者に不利益であるとは限らない)について、バランスをとった結果の規定だと考えることで理解できます。
権利関係法令で最初に登場する「天秤にかけて理解すること」が大事だということになります。

ところで、本試験終了後、各指導機関(資格試験予備校)において、正答番号(正解番号)と予想合格ライン(合格基準点)の発表が行われますが、多くの指導機関が目的としているのは、あくまでも試験結果の目安を提供することによって、それぞれの「次」に取り掛かることができる受験生が増えるというプラスの面を優先してのことだと考えています。

「本試験での解答番号」というデータの特殊性から、データサンプルが多ければ客観的なデータだともいえないですし、統計の手法を用いてこれらのデータを加工したとしても精度が高いとはいえないです。
そもそも、サンプルとなった受験者層に偏りがありすぎますし、真のデータを提供するものかどうかについても疑問が残るからです。
あくまでも、本試験の結果(正答番号・合格基準点)を判断するのは試験実施機関ですので、合格発表までは確定した情報にはならないです。

ちなみに、梶原塾の場合でも、塾生の平均点や最多得点層等のデータについては、合格発表後まで日々更新され、例年下がる傾向にあります。
そして、塾生から提供された本試験データについては、模擬試験のデータ等との紐付けをおこなって、来年度以降の教材作製に活かしています。
ボーダーラインの予想にだけ利用するのではもったいない貴重な情報です。

最後に、平成21年の宅建試験についてですが、経済等の状況も影響してなのか、充分な試験対策を講じて受験できた受験者は昨年以上に少なかったのではないかと考えています。
特に、宅建業の従事者については、求職中の方も含めて、それどころではなかったという受験者が梶原塾の塾生にも多いです。
今年は、8月の時点で来年度の再受講制度への切り替えの申し出をいただいた塾生もおられます。
指導機関を利用しない独学者についても同様の傾向なのではないかと考えています。

平成22年度は、宅建試験にチャレンジするすべての方々が、しっかり学習して本試験に挑める環境になることを願っています。

梶原塾 田中優彦

【参考】
宅地建物取引業法 第一条  (目的)
この法律は、宅地建物取引業を営む者について免許制度を実施し、その事業に対し必要な規制を行うことにより、その業務の適正な運営と宅地及び建物の取引の公正とを確保するとともに、宅地建物取引業の健全な発達を促進し、もつて購入者等の利益の保護と宅地及び建物の流通の円滑化とを図ることを目的とする。

宅地建物取引業法 第四十条  (瑕疵担保責任についての特約の制限)
宅地建物取引業者は、自ら売主となる宅地又は建物の売買契約において、その目的物の瑕疵を担保すべき責任に関し、民法 (明治二十九年法律第八十九号)第五百七十条 において準用する同法第五百六十六条第三項 に規定する期間についてその目的物の引渡しの日から二年以上となる特約をする場合を除き、同条 に規定するものより買主に不利となる特約をしてはならない。
2  前項の規定に反する特約は、無効とする。

民法 第五百七十条  (売主の瑕疵担保責任)
売買の目的物に隠れた瑕疵があったときは、第五百六十六条の規定を準用する。ただし、強制競売の場合は、この限りでない。

民法 第五百六十六条  (地上権等がある場合等における売主の担保責任)
売買の目的物が地上権、永小作権、地役権、留置権又は質権の目的である場合において、買主がこれを知らず、かつ、そのために契約をした目的を達することができないときは、買主は、契約の解除をすることができる。この場合において、契約の解除をすることができないときは、損害賠償の請求のみをすることができる。
2  前項の規定は、売買の目的である不動産のために存すると称した地役権が存しなかった場合及びその不動産について登記をした賃貸借があった場合について準用する。
3  前二項の場合において、契約の解除又は損害賠償の請求は、買主が事実を知った時から一年以内にしなければならない。

民法 第五百六十七条  (抵当権等がある場合における売主の担保責任)
売買の目的である不動産について存した先取特権又は抵当権の行使により買主がその所有権を失ったときは、買主は、契約の解除をすることができる。
2  買主は、費用を支出してその所有権を保存したときは、売主に対し、その費用の償還を請求することができる。
3  前二項の場合において、買主は、損害を受けたときは、その賠償を請求することができる。

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コメント

本試験の結果(正答番号・合格基準点)を判断するのは試験実施期間ですので、合格発表までは確定した情報にはならないからです。

実施機関の誤りでは

投稿: とも | 2009年10月24日 (土) 23時40分

こんにちは、ともさん。

訂正しました。

× 試験実施期間
○ 試験実施機関
 
ご指摘ありがとうございました。

梶原塾 田中優彦

投稿: 梶原塾 田中優彦 | 2009年10月24日 (土) 23時47分

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